- 亜熱帯暴風雨「アルベルト」が発生
- キューバでの洪水で7人死亡
- 米経済へ与える損失は10億ドル
甚大な被害をもたらしたアルベルトとは?
キューバでの死者や行方不明者、避難状況
キューバの民間防衛当局によると今月2日、亜熱帯暴風雨「アルベルト(Alberto)」にかかる洪水で、これまでに7人の方々が亡くなってしまったという。国営メディアは2人の行方不明も報道しており、これから死者・行方不明者ともに増える可能性もある。
この亜熱帯暴風雨アルベルトはキューバを襲ったのだが、死者は26歳から77歳の男性だった。被害が最も大きかったのはキューバ中部から東部にかけての複数の地域。現在行方不明の2人も18歳と51歳の男性。
国営メディアによると、中部の4県での4万人以上が大雨のせいで避難を余儀なくされた。
キューバ経済、環境への影響
キューバにおける経済の要所、南西部「シエンフエゴス」の石油精製所も洪水のため、一時閉鎖せざるを得なくなり、経済的被害を受けた。この石油精製所は湾岸にあるため、油の混じった水が約1万2000立方メートルも流出してしまい、環境への影響も危惧される。
亜熱帯低気圧の発生時期と米経済への影響
大西洋のハリケーンシーズンはいつも6月初旬なのだが、このアルベルトは例年よりも1週間早い、6月25日にカリブ海西部で発生。米アラバマ州、フロリダ州、ミシシッピ州は、この亜熱帯低気圧の接近に伴い非常事態を宣言した。さらにこのアルベルトは米経済に10億ドルを超える損失をもたらす恐れがあると、ブルームバーグ通信が報じた。専門家らによると、直接的被害が4億ドルから5億ドルになるとみており、その要因は倒木による自動車への被害や浸水、屋根への損害などだ。さらに6億ドルが観光客の減少による損害として計上されるとしている。
ハリケーンの名づけの由来と意味、人名との関係性
ちなみにアルベルトは今年名前が付けられた初めての亜熱帯低気圧である。普通、風速が62 km / hを超えると名前が付けられ、さらに119km/hを超えるとハリケーンへとランクアップする。
では、なぜ今回の亜熱帯低気圧はアルベルトなのか。
命名をする機関
命名する期間は公的機関である、具体的には以下の通り。
大西洋北部、太平洋北東部→米国海洋大気局国立ハリケーンセンター(フロリダ州マイアミ)
太平洋北中部のハリケーン→中部太平洋ハリケーンセンター(ハワイ州ホノルル)
現在は毎年発生したものからアルファベット順に男性名、女性名をハリケーンの名前に使用しているよう。
例:2015年の1番目のハリケーン=Andy、2番目のハリケーン=Brian、3番目のハリケーン=Caty
今回の亜熱帯低気圧は1番目、だからAから始まるAlbertである、なかなかおもしろい。
これらの名前は年度ごとにあらかじめリスト化されており、リストの最後までいくと最初に戻って命名されることになっているそうだ。しかし例外もある。被害規模が大きくなるほど、名誉棄損などで訴えられる可能性が出てくるかもしれないからか、大規模な被害を与えたハリケーンについては今後の名前のリストから除外するようだ。
なぜ人の名前?
19世紀〜20世紀初頭までは、上陸した場所の名前にちなんだ命名をしていた。当時はよほど被害を残したハリケーンにしか命名しなかったようだ。ただ、面倒なケースがある。複数のハリケーンが同エリアで発生した場合だ。この時、どれが先に発生したのか不明瞭になるし、ハリケーンの警告を出す際に、どのハリケーンが危険であるかを知らせるのに混乱をきたしてしまう可能性が考えられる。そうするうちに、親しみのある人名をつけたほうが、覚えやすくて使いやすいという認識が高まってきて人名をつけるようになったようだ。はじめは愛妻かガールフレンドの名前を付けていたそう。
1941年に『Storm』という小説が発表され、そのなかで登場するストームを女性名で「Maria」と名付け、大ヒット。特に空軍や海軍の気象学者はこの本に影響を受け、太平洋で発生した熱帯暴風雨に愛妻やガールフレンドの名前をつけるようになったそう。
Opinion
今回の災害において、行方不明者の安全を心から祈るとともに、これ以上被害が大きくならないことも祈る。経済や環境に与える影響を大きいので、この災害からの復興に期待したい。名前の付け方についてはなかなかおもしろい面があり、興味深く感じられる。初めは人名から命名していたようだが、最近では災害が起こった年に生まれた赤ちゃんにそのハリケーンなどの名前を付けることも人気なようだ。大きな被害が起こらずに済んだ幸福の印としてつけていたりするようだ。筆者の感覚からするとあまり共感はできないのだが、納得・共感できる人も一定数いると思う。今後海外の方と接するときには名前に着目してみたいと思う。